いつかの夢。あるいは、歌い出せない歌手の悲劇切符を買って、地下鉄に乗らないと……。しかし、いつまで経っても、切符が買えないのである。まず、自分が、財布からお金を取り出せない。いくら出せばいいのかもわからない。しかし、なかなか思い通りに動かぬ腕、手、そして指を駆使して、なんとかいくばくかの札とコインを取り出したところで、今度は係員が、どうしていいのかわからないのだ。「ちょっと待って。あそこに行けばわかるかもしれないから、行って聞いてくる」と、彼女は真夜中のロンドン郊外の街の闇の中に消えていってしまった。次の瞬間。なんと私たちは、街の中心の、大きな駅のコンコースにいたのである。ちょうど通勤ラッシュで、ビジネスマンが行き交う中、レコーディングを敢行しているのだ。ヴォーカリストである...2023.10.19 13:44夢音楽物語ギター雑感
富士見町に「日本一高い場所のストリートピアノ」が出現する!?200キロ以上はあろうかというその塊は、2人の手慣れた作業員により、まるで引っ越しの段ボール箱か何かのように軽やかに、そして滑らかに、建物に吸い込まれていった。保管場所に運ばれると、4本の脚をインシュレーター(皿)に乗せて固定するのだが、その間に筐体を支える木材は、昔はビール瓶を使っていたらしい。「皆さんがやられるなら、丸太を使えば間違いないと思いますけどね」と作業員のひとりがにこやかに教えてくれた。富士見パノラマリゾートに、シュバイツァスタインのアップライトピアノがやって来ると知ったのは、富士見町を中心に活動するピアニストの根本崇史さんに教えてもらったから。2023.07.10 15:23ピアノリレー長野県物語富士見町
宙に浮いて輝く「それ」「それ」は、向かいの家の 2階の屋根の、1メートルぐらい上空で、小刻みに震えていたのだという。午後の 5時を過ぎ、あたりはすっかり暗くなっていたが、人の顔ぐらいの大きさの「それ」は、赤、青、黄色などさまざまな光を放ちながら、震えながら佇んでいたのだ。ミラーボールのようなものを思い浮かべたら、案外実際と近いのかもしれない。夕方のまどろみの中、雨戸を閉める時間だと気づいた彼女は、窓辺に立って、「それ」を見つけた。「わぁ、きれい……」それが彼女の第一印象だったという。最初は、飛行機かとも思ったというが、次の瞬間には「それ」のはるか向こう側、はるか彼方の空を、本物の飛行機が横切っていった。「それ」は、やはりすぐそばにあるのだ。どれぐらい「そ...2023.01.03 11:50物語雑感ご挨拶